書くということ

「書く」——虚無に産声をあげる、執筆という名の狂気

白紙。それは、無限の可能性であると同時に、圧倒的な「無」だ。 キーボードを叩く指が止まれば、物語はこの世に存在しない。 頭の中にどれほど壮大な銀河が広がっていようと、どれほど熱い涙が頬を伝おうと、それを一文字の「形」に落とし込まない限り、世界は一ミリも動かない。 書かないとなにも始まらない。 それは、表現という荒野に足を踏み入れた者が、最初に突きつけられる残酷な真理である。

本サイトの根幹を成す「書く、読む、広める、支える」。 その出発点であり、最も孤独で、かつ最も崇高な営みである「書く」ことの深淵を、ここに記す。


1. なぜ、幻想(ファンタジー)の物語を紡ぐのか

私は、輪廻転生やタイムリープという題材を扱い続けている。 代表作である『Re:winDriv:eR 〜人類転生計画〜』も、その系譜にある物語だ。 「なぜ、現実から目を逸らすような幻想を追うのか」と問われることがある。

答えは、明白だ。 この現実という名の牢獄において、唯一、自由を許されるのが空想の世界だからだ。 転生とは、単なるやり直しではない。 それは、人間という存在の定義を、別の角度から照らし直す作業である。 絶望を抱えたまま、それでも「もう一度(Rewind)」と願う強さ。 その不格好なまでの生命の輝きを描くために、私は幻想の力を借りる。

ライトノベルの世界には、流行り廃りがある。 「異世界」という舞台が消費され、新たなジャンルが生まれては、砂上の楼閣のように崩れ去っていく。 だが、私は流行を追うために筆を執っているのではない。 流行(トレンド)という名の波を越えた先にある、普遍的な「魂の叫び」を書きたいのだ。 どれほど物語の舞台が変わろうとも、愛し、憎み、悩み、そして生きようとする人間の本質は変わらない。


2. 文章という名の呪縛、文学という名の壁

書くことは、容易ではない。 一文は短めに、リズム感を重視する。 「説明」するのではなく、キャラクターの行動や表情で「描写」する。 心理描写は、キャラクターの内面が深掘りされるように書く。 これらの基準を自らに課した時、執筆は快楽から苦行へと姿を変える。

キャラクターが笑ったとする。 それを「彼は嬉しそうに笑った」と書くのは容易だ。 だが、それでは文学にならない。 彼がどのような光の中で、どのような筋肉の動きを伴って、どのような渇望を隠しながら笑ったのか。 それを「描写」によって読者の脳裏に焼き付けなければならない。

言葉は不完全だ。 思考の熱量を、そのまま出力することは不可能である。 文学の難しさとは、その「不完全な言葉」を積み重ねて、奇跡のような「真実」を立ち上げようとする、矛盾した行為そのものにある。 それでも私は、この不自由な道具を使い、世界の輪郭をなぞり続ける。


3. 書き残すことの、抗いがたい誘惑

人は、死ぬ。 どんなに優れた思想も、どんなに美しい感情も、器である肉体が滅びれば霧散する。 だが、書かれた言葉は残る。

私がここに文字を刻むのは、一つの「足跡」を残すためだ。 かつて長月鳥という作家がいて、この世界をどう捉え、何に憤り、何を愛したのか。 それをデータという名の電子の海に、あるいは紙という名の物質に、永遠に定着させたいという根源的な欲求がある。 書き残すことは、時間の支配に対する、人類のささやかな反逆である。

自分の作品をウェブ上に公開し、ノベルムービープレイヤー(NMP)という技術で広めようとする試みも、すべてはこの一点に集約される。 「物語を、死なせない」。 それが、書き手としての私の、何物にも代えがたい「祈り」である。


4. 終着駅としての「ここ」

私は、残りの生涯をかけて、このサイトに自らのすべてを記すつもりだ。 小説、俳句、創作論。 これらは断片ではない。 私という一人の人間を構成する、不可分な命の記録である。

筆を置く日は、いつか来るだろう。 だが、その瞬間まで、私は「だ・である」という文学的な文体で、世界の真実を抉り出したい。 丁寧すぎる言葉や、解説調の安易な逃げは排除する。 人間味の溢れる言葉で、血の通った物語を紡ぎ続ける。

書くことは、生きることだ。 そして、生きることは、書き残すことだ。

扉は開かれた。 物語は、まだ始まったばかりだ。 虚無の中に、新たな産声を響かせるために。 私は今日も、言葉という名の剣を手に取り、真っ白な戦場へと赴く。

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